萱野智@hatenohate

児童文学と短編小説 / はてのはて / イラスト・雑貨・文学創作ユニット、ウチュークジラ

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「おや、やっと時間が追いつきましたかな?」
夜の田んぼの前に立ちつくすわたしの後ろに、いつの間にか誰かが立っていた。空気を震わせるカエルたちの鳴き声に紛れて、まったく気がつかなかった。
「それとも、あなたが巻き戻ったのですかな?」
これは現実だろうか、それともまたそら耳なのだろうか。
#おはなし #物語 #カエル #カエルの日


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帰り道、自転車で田んぼの側を通りかかったら、いっせいにカエルが鳴きだした。キャラコキャラコキャラコ。干からびていたカエルたちが、水を吸って息を吹き返したみたいだ。田んぼに水が入ったんだなぁ。夜に沈んだ田んぼからはたしかに湿った土のにおいがして、カエルたちの喜びの声が、自転車で走り去るわたしの背中をいつまでも追いかけてきた。
翌朝、同じ道を職場に向かって走った。田んぼの側を通り過ぎようとし、思わず自転車を止めた。そこにあるのは、まだ草のぼうぼうに生えた、土を起こしてさえいない田んぼだった。昨夜、田んぼいっぱいに広がって鳴いていたカエルたちは、なんだったのだろう。ケコッ!一匹のカエルが、どこかで鳴いた。
#おはなし #物語 #童話 #実は実話


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「このトンネルの向こうは、どっちだと思う?」
ウミネコがにやにや笑いながら言いました。
「どっち、とは?」
「こちら側とあちら側の境界は、思っているよりあいまいということさ」
ウミネコはそれだけ言うと、ミャーと鳴いて飛んでいってしまいました。

#おはなし #童話 #雄島 #松島 #トンネル


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